医学講話

皮脂欠乏症

二病棟二階病棟医 皮膚科専門医
斉藤 友紀子

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加齢とともに乾燥し始める肌には、保湿が大切。

皮脂欠乏症(乾皮症)は、皮膚の水分量が減少してカサカサした乾燥肌を生じる皮膚疾患です。生まれつきの体質や生活環境の影響もありますが、多くは加齢とともに皮膚は乾燥し始めるため、中高年者の皮膚はカサカサと乾燥したり、ひび割れたりする皮膚トラブルがよく生じます。いわゆる〝皮膚のうるおいが足りない〟といわれる状況です。

皮膚がうるおう理由
ではそもそも、皮膚の水分はどのような仕組みで保たれているのでしょうか。皮膚は水分を保持するための3つの要素があります。それは①皮脂②天然保湿因子(NMF)③角質細胞間脂質です。具体的にどのようなものなのか見ていきましょう。

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①皮脂(図1)
皮脂腺から分泌される脂(あぶら)のことです。汗と混じり合って皮膚の表面を覆い、角質が剥がれるのを防いだり、皮膚の水分が蒸発するのを防ぎます。皮膚の滑らかさを保つのも皮脂の役割です。皮膚の水分保持の2%程度をこの皮脂が担っています。

②天然保湿因子(NMF)(図2)
角質層にある低分子アミノ酸やPCA(ピロリドンカルボン酸)、ミネラル、尿素などによって構成されています。角質層の下にある顆粒層の細胞内のたんぱく質が角質層に押し上げられていく過程でNMFへと変化して生成されます。水分をつかまえて離さない性質を持っているため、水分を角質層に保持し、皮膚の柔軟性と弾力性を保ちます。NMFは皮膚水分保持の約18%を担います。NMFのバランスが崩れると、皮膚が乾燥するだけでなく、角質層の下の顆粒層が健康に育たず皮膚のターンオーバーそのものに影響を与えてしまいます。

③角質細胞間脂質
表皮で作られ、角質細胞と角質細胞のすき間をうめている脂のことです。皮膚の水分保持の約80%を担っています。主な成分はセラミドで、その他に遊離脂肪酸、コレステロールなどからできています。セラミドはもともと表皮の角質細胞内に存在しており、ターンオーバーで角質細胞が押し上げられて最も表面にある角質層に到達すると、細胞内のセラミドが角質層内の細胞間脂質に放出されて、角質細胞間脂質としてセラミドが存在するようになります。角質細胞間同士のすき間を埋め、水分の過剰な蒸散を防いだり、外部からの刺激の侵入を防いだりしています。

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皮脂欠乏症とはどんな症状か
皮膚表面の角質がはがれて乾燥して、カサカサしたり白く粉をふいたようになったり、はがれた角質が落ちていきます(写真1)。とてもかゆく感じますが、ここでかいてしまうとさらに角質がはがれたり、炎症が加わって湿疹化してしまいます。つまり皮脂欠乏症がさらに進むと、皮脂欠乏性湿疹に至ります(写真2)。皮脂欠乏性湿疹は、皮脂欠乏症の状態からひび割れたりかいたりして、炎症が加わり湿疹化してしまった状態です。この状態になると、治療は保湿剤の塗布だけでは足らず、湿疹の治療としてのステロイド軟こう塗布が必要となります。

 

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皮脂欠乏症の病態は
皮膚がうるおうためには、皮脂が作る皮脂膜、天然保湿因子(NMF)、セラミドなどからなる角質細胞間脂質の3つの要素が働くことは最初に述べました。この3つの物質がバリアを作り、皮膚内部の水分が蒸発しない仕組みを作り出しています。また、このバリアが紫外線などの外部刺激やアレルゲンなどから皮膚を守ります。(図3)
しかしこのバリア機能が壊れてしまうと、皮膚の水分が過剰に蒸発してしまい皮脂欠乏症となってしまいます。角質細胞が剥がれてすき間ができて水分が逃げやすくなり、また3大要素である皮脂膜、NMF、角質細胞間脂質が減少してしまうことで皮膚の水分保持機能が低下して皮脂欠乏症が生じます。(図4)
皮脂膜、NMF、角質細胞間脂質が減少するのは、加齢やストレス、睡眠不足、日焼けなどが主な原因となります。

 
日常での心掛け

❶お薬を正しく使いましょう
 皮膚にうるおいを与える塗り薬を保湿剤といいます。また、かゆみや湿疹を抑える塗り薬もあります。保湿剤の成分は、主に尿素、ワセリン、ヘパリン類似物質の3つあります。ワセリンは皮膚の表面をコーティングし、尿素は角層に作用するのに対して、ヘパリン類似物質は角質の下の皮膚の奥まで浸透して、皮膚が本来持つバリア機能を修復するといわれています。お薬はお医者さんの指示をよく守り、正しく使いましょう。
❷ゴシゴシ洗わない
 皮脂を取りすぎないことが大切です。お風呂に長く入りすぎたり、ナイロンタオルなどを使ってゴシゴシ洗いすぎたりしないようにしましょう。
❸皮膚のうるおいを保ちましょう
 皮膚にうるおいを与える“保湿剤”を朝晩2回塗りましょう。特にお風呂上りが効果的です。
❹お部屋の乾燥に注意
 空気が乾燥すると、皮膚の乾燥やかゆみもひどくなります。加湿器などを使ってお部屋の湿度を保ちましょう。
❺かかないことが大切
 かくと症状がひどくなるので、できるだけかかないように努めましょう。また、爪は短く切りましょう。
❻刺激の少ない肌着に
 皮膚を刺激すると、かゆみがひどくなります。肌着類などは、なるべく肌にやさしい木綿(もめん)のものにしましょう。
❻アルコールは控えめに
 アルコールや香辛料などの刺激物を取りすぎると、体が温まり、かゆみがひどくなります。控えめにしましょう。

《写真1・2・日常での心掛け:引用◉maruho 監修◉東京女子医科大学 皮膚科教授 川島眞先生》