医学講話

からだのむくみの仕組みと原因と対処法

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スポーツの秋。食欲の秋。体重増加の気になる秋?昨年度は腰痛予防対策、食物依存性運動誘発アナフィラキシーと、ちょっとかための(でもとっても大切で絶対に知っておいた方が良い)話題を取り上げさせていただきました。
今回は初心?に戻りダイエット関連のお話。美容系で話題の「リンパマッサージダイエット」あるいは「リンパドレナージュ」はご存知ですか?中には東洋医学と西洋医学を合わせたような「経絡リンパマッサージ」というものもあるようですが、今回は「リンパマッサージ」をキーワードに体のむくみについて考えてみましょう。
今回の執筆にあたりネットで色々なサイトにお邪魔させていただきました。創意工夫を凝らした美容系のサイト全てに書いてあった事を要約すると「リンパマッサージの効果としてリンパの流れをマッサージで良くする事により、体から老廃物などの毒素を集め排泄をうながし、その結果としてむくみがとれ、細くなる」といったところでしょうか。マッサージだけで細くなる、何とも魅力的なお話です。ところでリンパマッサージで取れると言われている「むくみ」とは何なのでしょう?
むくみとは医学的には浮腫と言い「組織間液の過剰貯留により体が腫れている状態」を言います。脂肪組織が増殖すること(つまり脂肪が増える)はむくみとは言いません。その原因は脈管の循環障害で起こります。
組織間液?脈管?いきなり分からなくなった方も多いと思います。先ずは脈管について下の図をご覧ください。静脈系・リンパ系の分布が描かれています。脈管とはこの図に動脈系を加えたものの総称です。動脈・静脈・リンパ管を指して脈管と言います。
次に組織間液ですが間質液と言い「組織の隙間にたまった水分」です。通常成人男子では体重の6割が水分で、細胞内液(細胞の中に存在する水分)と細胞外液に分けられます。細胞内液は体液の2/3、細胞外液は1/3を占めます。細胞外液は更に組織間液と血漿に分けられ、細胞外液のうち3/4が組織間液、1/4を血漿が占めます。「体内の水分布」の図をご覧ください。組織間液の予備能を超えた水分の増加が浮腫となります。
「毛細血管での微小循環」の図は血管と間質の体液の移動を示しています。どのくらいの圧がかかるとどのように体液が移動するのか、が描かれています。この体液の移動により酸素と二酸化炭素、栄養と代謝産物(老廃物)の移動・交換が行われます。この時、静水圧(静脈圧、リンパ管圧)の上昇、膠質浸透圧の低下(アルブミンを中心とするタンパク質の濃度の低下)、血管透過性の亢進、間質の異常・リンパ還流の低下などが見られると組織間液の2〜3リットル以上の増加がみられ、その結果、組織間隙が粗く圧の低い皮下に体液が過剰に貯留して腫れた状態つまり浮腫を生じます。
ではむくみを生じる原因にはどんなものがあるのでしょうか?「浮腫の鑑別」の表をご覧ください。心不全、腎不全、肝硬変など命に係わる病名が目白押しです。美容系のリンパマッサージでむくみを何とかするよりも、まずは原因の特定とその治療が基本です。ここでは治療については触れませんが、浮腫対策としては病態により安静または運動、水分・塩分制限、利尿剤を中心とする薬物療法、弾性包帯と弾性着衣による圧迫療法や用手的リンパドレナージ(医療徒手リンパドレナージ)などが挙げられます。
ここまでお読みになられた方は体のむくみを感じたら、先ずは医療機関受診で治療すべき疾患の有無を調べる事がいかに重要かお分かりになったと思います。検査の結果、特に病気が見つからず、何となくむくみが気になる場合はどうすれば良いのでしょうか?せっかくなので職場でも出来る簡単な運動と就寝時の対処法をご紹介いたします。それは「肩回し」、そして「鎖骨回りを擦る」、夜間は足を心臓より高くして寝ることです。「肩回し」は前回し、後回し、その両方でも構いません。肩を動かすことによって筋肉ポンプとしてリンパ管を動かす効果があります。用手的リンパドレナージの前処置としても行われます。「鎖骨回りを擦る」のも肩から胸骨に向かって数回程度行うだけでも違います。リンパ液が左右のリンパ本幹から静脈への流入を助けます。就寝時の下肢挙上は心臓との高低差によって生じる静脈圧の低下が期待できます。もちろんリンパマッサージのサロンに通いリラックス効果を期待して…という方はどうぞ。