研究通信

輸入伝染病に備える

豊田哲也

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この夏、東京の代々木公園でデング熱の患者が報告されたのを皮切りに、西宮市、千葉市での感染が確認された。毎年、海外旅行者の帰国後の発症が数十例はあったが、国内での感染は六〇年ぶりとのことである。デング熱は病気にかかった人の血を吸ったヤブ蚊(ヒトスジシマカ)に刺されることで感染する。グローバル化と地球温暖化により、熱帯の伝染病であるこれらの病気が、日本に輸入される危険性は、以前から指摘されていたが、今年、それが現実のものとなった。特に、デング熱を伝える蚊はどこにでもいるヤブ蚊であり、都会では、空調の完備されたビルや地下鉄で越冬することができるので、来年以降もデング熱がはやることが危惧される(表1)。また、デング熱以外の蚊によって媒介される伝染病も、蚊の生息地の北上により、いつでも日本に定着できるようになっている。このようなことから、2020年の東京オリンピックでは、輸入感染症の対策も重要になると思われる。

表 蚊によって媒介される伝染病

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また、感染症法により一類感染症(まず助からない)に分類されるエボラ出血熱が制御不能なくらいに拡大していることと、日本の企業が開発した抗インフルエンザ薬アビガンが効きそうだというニュースが連日報道されている。ちなみに、デング熱は四類感染症(あぶない)に分類されている。これら、ウイルスによって引き起こされる病気にはワクチンが一番であるが、ワクチンを作るには時間がかかる。それだけではなく、デング熱では、抗体をもった人が再感染すると、デング出血熱という命の危険な状態になるという問題があるため、ワクチンが使えない可能性もある。そこで、ウイルスの増殖を阻害する抗ウイルス薬が必要となる。エイズは抗ウイルス薬により、死なない病気となったし、C型肝炎も治る病気となった。さらに、エイズ、C型肝炎の治療薬の開発のためにたくさんの薬の源が蓄積されており、それを調べ直せば、短期間に抗ウイルス薬の開発ができる条件が整っている。今回、まず、蚊によって媒介されるウイルス(フラビウイルスという)のポリメラーゼを精製し、蛍光偏光を測定するという方法で、阻害薬をスクリーニングするシステムを作り(図1)、研究費の応募をした。研究費が通ればいいのだが…。アフリカは人類発祥の地である。アフリカの風土病であるエボラ出血熱が人類終焉の始まりとならないようにしなければならないと考えている。

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図 PETEアッセイの原理(Campagnola,Antivial Res91:241-25,2011)
ポリメラーゼと5’端の蛍光色素との位置による干渉で蛍光偏光の相違が生じる。