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老有所為

三世代家族の肖像 支え合う生き方

photos : Hitoshi Iwakiri
text : Junko Haraguchi
 ご主人の黄承清さん(34歳)は、中国南部の広西チワン族自治区の山村から北京の大学に進学した村をきっての秀才。奥さんの王媛媛さん(30歳)は東北地方の大都会、瀋陽の出身、同じく北京の大学に進学。
 二人とも現在はIT関係の仕事に従事。二人とも故郷を離れ北京で家庭を築くたいへんな努力家。
 3年前に結婚、2016年秋に長女の令儀ちゃんが生まれた。
 2016年秋生まれの令儀ちゃん。1歳を迎えたばかり。
 どちらかといえばお父さん似? 広い額でいかにも賢い子に育ちそう。
 黄霊先さん(59歳)と奥さんの也標さん(60歳)。北京に暮らす息子夫婦の孫の面倒をみるため一大決心をして先祖代々暮らしてきた広西チワン族自治区の山村から旅立ち、4日間かけて北京にやってきた。
 「息子夫婦のおかげで大都会の暮らしや天安門広場といった名所も見られて感謝している」とお二人。
 でも子育てサポートを終えてまた村に帰るのも楽しみにしている。たくましい!
 息子夫婦の家から徒歩5分の公園は、令儀ちゃんのお気に入りスポット。毎日、午前と午後に出かけ、歩く練習をしたりもする。
 同じく孫の面倒を見ている同世代の顔見知りも増えた。
 約200戸のチワン族が暮らす山村からやってきた黄霊先さん。北京で暮らしているシニアは村が始まって以来、自分たち夫婦だけという。
 北京も面白いが、そのうち村に帰り大都会の暮らしをみんなに話す日も楽しみにしている。
 物静かで辛抱強い也標さん。まだ1歳の令儀ちゃんは、お祖母さまにとてもなついている。
 泣いた時、あやす効果が一番高いのは也標さん、次がママの王媛媛さんとか。
 団結力を感じさせる三世代家族。でも、やがて祖父母世代は村に帰り、家族はまた新しい形になる。
 令儀ちゃんを公園から連れて帰るついでに住まいの近くの市場に寄り、本日分の食材を購入。
 食事の支度は、お祖父さまの霊先さんの日課。村に比べて北京は食材が多く、初めて見るものもいろいろあった。
 住宅区内の青空市場は、おなじみの人ばかりが訪れるので、食材はフレッシュ、厳選されている。
 令儀ちゃんもすくすく育つ。
 お昼寝前のお楽しみ。日本製の粉ミルクを愛用。
 本日の昼食の献立は? メインはスペアリブ!
 三世代のにぎやかな食事。でも、黄さん、王さんは仕事で忙しいので、全員が揃って食卓を囲むのは週末だけ。若い夫婦が3年前の結婚時に購入した高層団地がスイートホームだ。
 近くに名門小学校があり、やがて生まれてくる子供の教育のことも考えたうえで購入を決めた、という。
 機嫌をとりながら、ひょいと離乳食を食べさせる。
 お祖母さまの、流石のテクニック。
 猛烈な受験戦争下にある中国では早期教育も盛ん。本日はその一つに下見に訪れた。
 「いろいろな刺激を与えてあげたいし、他の子供と遊ぶ機会を増やしてあげたいし」と王媛媛さん。
 ご主人の黄承清さんは、費用も相当かかるのでもう少し検討したいよう。
 絆の力を感じさせる幸せな家族像。一人一人が支え合うけれど、でもちゃんと自立もしている。
 年齢を重ねて、いつか親になり、孫に恵まれる……。幾つになっても役割があり、だから自立して幸福に生きていくことができる。そんな家族の幸福力は、きっと令儀ちゃんに受け継がれていく。
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