CROSS TALK
SAKON Dialogue : 002

「腸」から考える
幸福な食事

西邨マユミ(マクロビオティック・ヘルス・コーチ)
西邨マユミ
MAYUMI NISHIMURA
マクロビオティック・ヘルス・コーチ
SAKON Dialogue : 002
「腸」から考える
幸福な食事
本格的な高齢化社会を迎えて現代において、ふだんの食生活を考えることは、とても大切なテーマです。人生100年時代。健康寿命を延ばしていくためには、いまはまだ若い世代であっても、やがて訪れる老年期に備えることが大切です。マドンナをはじめ、世界のセレブリティたちのプライベートシェフを務めた西邨マユミさんに、健康と食の関係についてお話を伺いました。健康とは? ちゃんとした食事とは? 「腸」から考える幸福な食事についてのお話です。
photos : Hitoshi Iwakiri
text : Keisuke Ueda

人生100年時代の健康な食

「腸」が欲する、ちゃんとした食事とは?

山本左近(以下、山本):いま社会でイメージされる高齢社会について言えば、暗い、というか明るくない話題が多く散見されます。ですが、本来長生きすることは、誰もが望んできたことで、とても喜ばしいことであるはずなんですよね。とても幸せなことであって、もっと明るいイメージがあっていいはずなのに、そうなっていない。
 その中で私たちは変化する社会構造に合わせたシステムの変化も必要だということもありますが、何よりもまず、まだ高齢者ではない僕ら世代が、自分もやがて年齢を重ねて高齢者になっていくということを想像して、その未来をどう幸せに生きていくかということを、“いま”の自分自身の生活の中で考えることが大切だと思うんですね。
 そのなかで、「食」は生活を支えるとても重要な要素ですし、健康に生きていくためにどういう食を選択すべきなのかを考えるためで、今日は西邨さんに色んなお話を伺いたいと思います。

西邨マユミ(以下、西邨):まず健康とはなにか? ということですよね。その人にとって、健康の先にあるものを考えることが大事ですね。もっと運動をしたいとか、もっとお孫さんと遊んであげたいとか、そういった自己実現の前提になる状態が健康ですよね。
 長く生きて、世の中が変わっていくことを実際に自分自身が体験できることは楽しいし、ワクワクすることでしょう?人生100年時代、私自身は120歳まで生きようと思っていますが(笑)、加齢と共にスローダウンするにしても、自分のことは自分でできるというアクティブな健康な状態を維持できることが、明るい未来ですよね。だから、ただ生きるために食べるのではなく、健康の先にあるもののために、なにを選択するのか、を考えることも大切ですね。

山本:確かにそうですね。日本のような都市化が進んだ社会では、いろんな食の選択肢がありすぎて、逆に、何を選んだらわからないという状況もあるのではないでしょうか。僕も含めて現代に生きている人たちが、「ちゃんとした食事」をすることがとても難しくなってきているようにも思います。外食の機会も多く、不規則になりがちだったり、逆に少し健康に意識してみると色んな情報があったり、健康でいられる食事を選ぶにはどうしたら良いのかということは悩みどころなんだと思います。

西邨:まずは、「お腹が空いた」という感覚に注意することです。空腹感というのは、実は5分くらいの一時的な感覚で、お腹というのは「腸」。人間は植物と違って根っこがないから移動できるわけですが、植物の「根」が果たしている役割を担っているのが「腸」で、栄養を取り込み、消化し、体をつくってくれています。
 空腹に任せて食べ過ぎない、偏った食事を避けることは「腸」の負担を軽くすることでもあるし、さらに、その土地で採れた野菜を中心とした菜食は、お腹にも楽なんですね。
 マクロビの世界では、「身土不二」という言葉がよく使われますが、これは人間と地球は分かち難く繋がっていて、共に健康であるための考え方を表すものです。

山本:それは、「地産地消」という考え方でしょうか。

大切な「ご飯」と「おかず」の関係
作り置きからはじめる、健康な食生活チェンジ

西邨:自分の暮らしている土地にある、なるべくそこで育てられた食物を食べるということは、どこか遠くから運ばれてくるものを食べるよりもエネルギーをたくさん採り入れることができます。また、実際に食べる分だけを栽培していれば、その土地が過剰に疲弊することもない。それが身土不二であり、地産地消です。地球が衰えてしまっては、人間の健康も危うくなってしまいますからね。

山本:なるほど。そこには感謝の気持ちがありますよね。僕の父は、食事の際に必ず、「箸とらば、雨、土、御代の御恵み、祖先や親の恩を忘れじ」と手を合わせて「いただきます」と食べてたのを思い出しました。子供のころは不思議なおまじないだなと思っていたのですが、いま振り返った時になんて素敵な言葉なんだろうと思ったわけです。それは日本の「和」の文化に通じるものがあるんでしょうか?

西邨: マクロビオティックって、外国で教えていると日本の食べ方だろうと思われていて、逆に日本に来ると外国のものだと思われたりするのですが(笑)、その土地に根付いた食であり調理ということで言えば、日本人にとっては「和食」ということになるでしょう。
 私自身、世界を旅していて思うのは、日本には、主食と副食という考え方が食文化としてあるということ。「ご飯」と「おかず」です。朝ご飯、昼ご飯、晩ご飯、いずれもメインはお米などの穀物で、ご飯を食べるためのおかずがある。英語では食事のことをミールと言いますが、これも食事であり穀物を意味する言葉ですね。世界中どこに行っても主食は穀物であるはずですが、この穀類を主食とする考え方が残っているのは、和食です。主食という考え方が疎かになると、健康な食は崩壊してしまうと思います。

山本:ご飯とおかずの関係は、和食の特徴でもありますね。「おかず」の部分でいえば、色んな種類をちょこちょこ食べることができるのが和食の特色かと思いますけれど、いかがでしょうか?

西邨:日本のお総菜の良いところは、作り置きができることです。最初のお話に戻りますが、健康な食の選択、山本さんがおっしゃる「ちゃんとした食事」を実践するために、作り置きという習慣を身に付けることでハードルを下げることができるでしょう。例えば、朝ご飯だけでも菜食に変える。そのために、週末に5日分の朝ご飯のおかずを作り置いておく。これだと楽に続けられるような気がしませんか? 一日三食のうちの一食、つまり、生活の1/3を変えることができる。それは、大きな変化です。
 お味噌汁やおすましなどは、私は日本が世界に誇るべきインスタントスープだと思っています。お野菜を煮て、お味噌か醤油を加えるだけ。良いお味噌や醤油、良いお野菜があれば、出汁はとらなくてもいいんです。なにより、お腹に優しいですからね。
 
山本:つまり、健康な食生活にシフトチェンジしようとしたときに、作り置き文化のある和食は、優れた選択肢だということですね。

西邨:そうです。そして、そのときになるべく体の負担にならない菜食中心の献立を考えてみてください。見た目や味付けだけでなく、腸が消化しやすい素材、なるべく無農薬の有機栽培の旬の食材を選ぶこと。自分がいま選択している食は、例えば、10年後、20年後の自分の健康に確実に現れてきますから。

西邨マユミ
MAYUMI NISHIMURA
マクロビオティック・ヘルス・コーチ
1982年に単身渡米、マクロビオティックの世界的権威である久司道夫氏に師事。クシ インスティテュート ベケット校の料理主任および料理講師として活躍した他、時代のニーズに合った「プチマクロ」を提唱している。 2001年より通算10年間にわたり歌手マドンナ一家のパーソナル・シェフを務めた他、ブラッド・ピット、ミランダ・カー、スティング、ゴア元副大統領など多くの著名人に食事を提供。現在も国内外で精力的に活動中。
山本左近
SAKON YAMAMOTO
医療法人さわらび会副理事長・統括本部長
レーシングドライバー/元F1ドライバー
1982年、 愛知県豊橋市生まれ。幼少期に見たF1日本GPでのセナの走りに心を奪われ、将来F1 パイロットになると誓う。両親に土下座して説得し1994年よりカートからレーシングキャリアをスタートさせる。2002年より単身渡欧。ドイツ、イギリス、スペインに拠点を構え、約10年間、世界中を転戦。2006年、当時日本人最年少 F1デビュー。2012年に日本に拠点を移し、医療法人/社会福祉法人の統括本部長として医療と福祉の向上に邁進する。日本語、英語、スペイン語を話すマルチリンガル。

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