MIRAI


山本左近の未来考察『医療福祉×テクノロジー』
第6回
204x年
8月xx日。
いつかの未来から
-医療者編
パーソナル・ヘルス・レコード(PHR)が実現する未来
204x年08月xx日。午前9時、さあ外来のスタートだ。といっても、昔みたいに直接来院される患者さんは本当に少なくなった。広い待合室で一方向に向いたソファーが並んでいる光景など、もうずいぶん見ていない。
だからといって、患者さんがいないわけじゃない。むしろ、もう待っている患者さんがいる。そう、対面診療からオンライン診療が当たり前になったのだ。
65歳以上が人口の40%以上まで進むなかで、山間部やへき地だけでなく都会でも通院困難者が増え、結果として、オンライン診療がなくては成り立たなくなったというのが現状だ。
それよりも大きかったのは、やはり利便性なのだろう。一度その便利さに慣れてしまうともう昔へ後戻りできないのが、人間の性だ。
昔と同じように皆保険があり全国どこでもフリーアクセスであるものの、まずは、地域の定められたいくつかの総合診療医にかかるのが大原則だ。一極集中を避ける意味合いもあるし、何かあったときには対面診療できるようにということだ。
もちろん専門医や特別な疾患がすでに分かっている場合はその限りではない。 それらの判断を助けてくれるのがメディカルAIコンシェルジュだ。

ソーシャルワーカーの機能を代行してくれるメディカルAIコンシェルジュが、患者さんをマッチングしてくれる。
診察室に入ると、椅子と机がある。今日1人目となる患者さんが、自宅ですでに待っていた。
彼の病状やバイタルデータは診察前に送られてきているので、まずはそれを確認する。そこから通信をオンラインにして、「どうされましたか?」と昔の名残で話を始めるのだが、実はこのときにはもうすでに診療補助AIが予測して答えを導き出してくれていた。
風邪の症状ということだが、以前、診たときとちょっと表情が違う気がする。生活の様子などに大きな変化はないが、なんとなく気になったので、今日は血液検査をしておくことにする。この辺りの「人間の勘所」が、AIにはまだつかめない。
離れているのに血液検査をどうするかというと、もっとも患者さんの自宅近くを回っている自動運転車に乗った訪問看護師に連絡を入れる。
昔は訪問看護ステーションとして拠点があり、そこを中心に動いていたのだが、今はモビリティナーシングと呼ばれ、勤務時間中は街中をずっと車でグルグル回っている。昔と違って、自分で運転する必要がないため、車のなかは外よりも快適だったりする。
さて、ちょうど近くを回っているナースに連絡を入れ、向かってもらった。10分ぐらいで着くとのことなので、結果を待つこととする。
その間に、次の患者さんの診療を始める。ちょうど2人目の患者さんが終わったタイミングで、訪問に行ったナースから連絡が入っていた。血液検査の結果、ある数値が異常値を示しているとのこと。
そうそう、この血液検査もずいぶん速くなった。注射器から血液を採っている最中から検査を始めてくれる自動検査機能つき注射器が開発されたおかげだ。
これはすぐ入院したほうが良さそうだったので、入院調整に入る。今は入院が必要というオーダーを出したら、AIコンシェルジュがやりとりしてくれる。地域や病状や治療内容、空き状況を判断し、入院の手続きを進めてくれる。
入院と同時に退院予測もしてくれる。もちろん予測が外れることもあるのだが、90%ぐらいの確率で当たるまで精度は上がってきている。
さて、もうすでに次の患者さんが待っている。
前回に続き、今度は医療者側の視点からある未来の1日を妄想してみました。医療は日々進化しています。こうした診療がおこなわれる日は、それほど遠い未来ではないのかもしれません。
だからといって、患者さんがいないわけじゃない。むしろ、もう待っている患者さんがいる。そう、対面診療からオンライン診療が当たり前になったのだ。
65歳以上が人口の40%以上まで進むなかで、山間部やへき地だけでなく都会でも通院困難者が増え、結果として、オンライン診療がなくては成り立たなくなったというのが現状だ。
それよりも大きかったのは、やはり利便性なのだろう。一度その便利さに慣れてしまうともう昔へ後戻りできないのが、人間の性だ。
昔と同じように皆保険があり全国どこでもフリーアクセスであるものの、まずは、地域の定められたいくつかの総合診療医にかかるのが大原則だ。一極集中を避ける意味合いもあるし、何かあったときには対面診療できるようにということだ。
もちろん専門医や特別な疾患がすでに分かっている場合はその限りではない。 それらの判断を助けてくれるのがメディカルAIコンシェルジュだ。

ソーシャルワーカーの機能を代行してくれるメディカルAIコンシェルジュが、患者さんをマッチングしてくれる。
診察室に入ると、椅子と机がある。今日1人目となる患者さんが、自宅ですでに待っていた。
彼の病状やバイタルデータは診察前に送られてきているので、まずはそれを確認する。そこから通信をオンラインにして、「どうされましたか?」と昔の名残で話を始めるのだが、実はこのときにはもうすでに診療補助AIが予測して答えを導き出してくれていた。
風邪の症状ということだが、以前、診たときとちょっと表情が違う気がする。生活の様子などに大きな変化はないが、なんとなく気になったので、今日は血液検査をしておくことにする。この辺りの「人間の勘所」が、AIにはまだつかめない。
離れているのに血液検査をどうするかというと、もっとも患者さんの自宅近くを回っている自動運転車に乗った訪問看護師に連絡を入れる。
昔は訪問看護ステーションとして拠点があり、そこを中心に動いていたのだが、今はモビリティナーシングと呼ばれ、勤務時間中は街中をずっと車でグルグル回っている。昔と違って、自分で運転する必要がないため、車のなかは外よりも快適だったりする。
さて、ちょうど近くを回っているナースに連絡を入れ、向かってもらった。10分ぐらいで着くとのことなので、結果を待つこととする。
その間に、次の患者さんの診療を始める。ちょうど2人目の患者さんが終わったタイミングで、訪問に行ったナースから連絡が入っていた。血液検査の結果、ある数値が異常値を示しているとのこと。
そうそう、この血液検査もずいぶん速くなった。注射器から血液を採っている最中から検査を始めてくれる自動検査機能つき注射器が開発されたおかげだ。
これはすぐ入院したほうが良さそうだったので、入院調整に入る。今は入院が必要というオーダーを出したら、AIコンシェルジュがやりとりしてくれる。地域や病状や治療内容、空き状況を判断し、入院の手続きを進めてくれる。
入院と同時に退院予測もしてくれる。もちろん予測が外れることもあるのだが、90%ぐらいの確率で当たるまで精度は上がってきている。
さて、もうすでに次の患者さんが待っている。
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前回に続き、今度は医療者側の視点からある未来の1日を妄想してみました。医療は日々進化しています。こうした診療がおこなわれる日は、それほど遠い未来ではないのかもしれません。