MIRAI
山本左近の未来考察『医療福祉×テクノロジー』
第3回

いくつになっても
幸せでいる秘訣

平均寿命と健康寿命の
ギャップ

 「健康日本21の推進に関する参考資料」によると、2010年における女性の平均寿命は86.30歳。これは「2010年生まれの女の子は、社会情勢などの大きな変化がない限り、平均的には86.30歳まで生きられる」ことを意味します。

 では、「健康寿命」についてはどうでしょうか。健康寿命は、厚生労働省によると「健康上の問題で、日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されています。

 どういう状態を指して「制限される」とするかは解釈がわかれるところですが、2010年時点の健康寿命は、男性で70.42歳、女性で73.62歳となっています。

 健康寿命は3年ごとに公表されていて、初回の01年(男性69.40歳、女性72. 65歳)から延び続けており、この15年間で男性は104%、女性は103%の伸び率です。


出典:厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会・
次期国民健康づくり運動プラン策定専門委員会
「健康日本21(第二次)の推進に関する参考資料」p25

人生100年時代を考えるうえで
見逃せないポイント

 仮にこの係数がそのまま続くとすると、2045年の平均寿命は男性が88歳、女性が94歳、健康寿命は男性が78歳、女性が80歳となります。つまり、平均寿命と健康寿命のギャップは、男性が10年、女性が14年ということになります。

 これらのデータから、わかることは何でしょうか。それは「健康上の問題で、日常生活が制限されることなく生活できる期間」から、最後の10年というのは、「病気や介護といった健康上の制限を受けながらも生活していく期間」になっているということです。

 誰でも最後の10年は少しずつ病気になったり、介護が必要になったりするという事実。ショッキングなことですが、これは、けっして「生活ができなくなる」ということではありません。

 適切なときに、適切な医療や支援を受けられれば、本人が望む人生を歩んでいくことは可能なのです。この事実をきちんと正面から捉えることが重要に思います。
 この点が、人生100年時代を考えるうえで見逃せないポイントだからです。

他の方の役に立つことで
幸せになれる

 心身ともに健康であることは幸せの第一条件ですが、かといって必須条件ではありません。それは視覚障害をお持ちの方が、日常生活の制限を受けるからといって不幸せなわけでないことと同じです。

 以前、視覚障害者柔道でパラリンピックに出場し、メダルを獲得された廣瀬誠さんとトークショーで対談させていただきました。このとき廣瀬さんは、「障害は不便ではあるけれど、不幸ではない」と、ヘレンケラー女史の言葉を引用して、はっきりとおっしゃっていました。

 僕たちは自分の健康を害していくとき、暗い気持ちになります。健康なときのように動けないので苦しい……。いつ治るのかわからないからつらい……。年を重ねることで失われていく能力への自己嫌悪もあると思います。

 こうしたいろいろな感情が交錯し、心のなかで葛藤が生まれます。この苦しみから逃れる術はありませんが、たとえできないことが増えたとしても、適切な医療や支援を受けながら、今ある能力で他の方の役に立つことはできます。

 幸せはそこにあるのではないでしょうか。私たちは、お互いにそれぞれの役割を持ち、今自分のできることで他の方の役に立つ働きができるとき、幸せを感じるものです。この事実を忘れなければ、いくつになっても幸せな人生を歩むことはできるはずです。

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