Super GB

常に「出発点」。
終点のない生き方

005
志茂田景樹
Kageki Shimoda

志茂田景樹さんに聞く、
充実感のある毎日を送る秘訣

人生100年時代といわれる今、70歳なんてまだまだ若い。超高齢社会が加速する中でも、高齢であることをみじんも感じさせない、それどころか若者以上にバイタリティに満ち溢れた活動を続ける人がたくさんいる。想像を絶するほどタフで、趣味も仕事も全力で楽しむそんな人たちを、称賛の気持ちを込めて「SG/SB (Super Great / Super Beauty)」と命名した。彼ら彼女らの輝きの源はどこにあるのか。その秘密を知りたくて、そして学びたくて、会いにいくことにした−−。

今回訪ねたのは、作家の志茂田景樹さん。精力的な創作活動で数多くの作品を生み出し、その後も活動の幅を広げてきた。78歳となった今もまだ衰えを知ることのない志茂田さんに、活躍し続ける秘訣、そして超高齢社会の課題についてアドバイスをいただいた。
photos : Nobuaki Ishimaru(d'Arc)
text : Takaomi Matsubara

読み聞かせによって気づいた
「物語」の力

Q: 志茂田さんは数々の作品を世に送り出しつつ、「よい子に読み聞かせ隊」を結成し、読み聞かせの活動を続けてこられるなど、精力的な活動を重ねてこられました。原点は何だったのでしょうか。
志茂田景樹(以下、志茂田):読み聞かせを初めて行ったのは、1998年の秋です。その前年、僕の事務所に出版部を立ち上げたことから、サイン会や講演会を精力的に行うようになったのですが、あるサイン会のときに、野次馬している子どもの姿が目に入ったのですね。僕も母に読み聞かせをしてもらっていて、そのときの心地よさが刻まれていたのと結びつき、読み聞かせを始めるようになりました。

初めてやったのは福岡の書店でしたが、3人くらいの子どもが「またやってね」と声をかけてくれ、感動しました。しかも子どもだけでなく、大人も絵本の世界に入り込んで聞いてくれました。「実は、いやなことがあって落ち込んでいたのだけど、元気になりました。ありがとうございます」と50代くらいの女性からお礼を言われたのです。

「え、読み聞かせって、こんなに力あるの」とカルチャーショックだったし、物語の力を実感しました。何より、僕自身、爽快な気持ちになったんですね。東京に戻って女房にそのことを話して、2人で活動を始めました。その後、仲間が増えていき、「読み聞かせ隊」のメンバーは今では30人以上になります。
「いまの時代に必要なのは豊かな心をもつことであり、
とりわけ次代を担う子どもたちの心を豊かにのばしていくことが大切」と語る。

あなたの人生経験は
若い人に伝える価値がある

Q: 超高齢社会では、生きがいをどのように見出すのかが、大きな課題になっているように思います。特に「人生100年時代」と言われるようになり、いかに充実した生活を送るかは重要になっていますが、どうすればそのように過ごせると考えますか。
志茂田:「いかに生きていくか」は大きなテーマですよね。僕は毎年、学校の友達とクラス会を開くのですね。20人くらい参加するのですが、そのとき考えることがあります。

同級生たちは仕事からリタイアしているわけですが、じゃあ何をしているかというと、ただ暇をもてあましています。せいぜい温泉めぐりをしているくらいですが、よく考えると、みんな長い時間を生きてきて、仕事をして、スキルをいっぱい持っているわけです。経験や知識もある。なのに、それを活かすことなく、宝の持ち腐れにしています。

だったら、培ってきたものを、若い人に伝えていったらいいんじゃないか。相談に乗ればいいんじゃないか。若い人にも喜ばれるでしょうし、役に立つことができる。実はそれが大きいのですね。

というのも、人間、自己満足だとほんとうの充実感は得られません。誰かのために、あるいは地域のためでもいいですが、他のために役に立つことで充実した気分になれます。
スキルや知識を心や頭の蔵に入れていたら、死蔵もいいところです。伝えることで役に立てるし、自分自身もリフレッシュできるし、人生がずっと充実するんじゃないかと僕は思っています。
「自己発見、シニアの道は輝いている」「100歳まで如何にたのしく生きるか」などをテーマにした、
シニア向けの講演を依頼されることも少なくない。

介護するという経験が
人生を充実させていく

Q: 超高齢社会では、生きがいをどのように見出すかとともに、介護についても課題となっています。現状を見て、どのようにお感じになりますか。
志茂田:育児休暇があるように、介護休暇も必要なんじゃないかと思います。というのも、介護は子育てよりつらい場合もありますよね。

では、どのように介護のつらさを減らしていけるのか、それを超えて楽しくなれるのかですが、実は、介護はしている人もつらいでしょうが、介護されている人たちは、介護されて生きていることに、肩身の狭い思いをしているんじゃないかと思います。

家族に迷惑をかけているという思いがあったとしたら、介護してもらっても素直に喜べないはずです。介護する人間にもどこか義務的な意識がある。喜んで介護できない。これでは悪循環です。

乗り越えるためには、介護の意味を考えることではないでしょうか。介護をすることで、健康について考えるきっかけを得られたりもします。また、介護を通じて「充実して生きるヒント」を受け取ることもできます。究極的には、人生を充実したものとして終わらせるには、介護の経験はとても貴重で大切なことのように思います。

介護される人も、介護されることの喜びや生きがいを今一度考えることで、人生の充実感が生まれてくるのではないでしょうか。
毎日のようにつぶやくTwitterのフォロワー数は38万人以上(2018年11月現在)
若者たちの悩みに耳を傾け、エールを送り続けている(@kagekineko)

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